エアコンは嫌いです

都内某大学に通う文系大学生のメモ。

機種変更と実家

機種変更するために実家に帰った。1人でもできることだが、プランを考えたり引き継ぎを1人でしたりするのが面倒な上に、そろそろ帰りたいなとぼんやり思っていたのもあっての帰省。

2時に予約している、と言われていたが、強烈な朝寝坊をかましてしまい到着したのは1時過ぎ。ギリギリ間に合わないくらいの時間。

改札を出て母と合流。先日プレゼントしたTシャツを着ていてくれて、嬉しかった。絶対に似合うと思っていたが、やはり似合っていた。

車で母と話しながら家に帰る。「おじいちゃん(父方の祖父)が入院している。がんが再発して、おととい手術を受けた。予定より長引いたらしいけれど、きのう集中治療室を出た。お見舞いに行っておいで」と打ち明けられ、日頃感じる死への恐怖から、涙が止まらなかった。身内が死ぬのも、自分が死ぬのも、これ以上なく怖い。

家に着いたはいいが、時刻は2時過ぎ。父ブチ切れ。謝り倒して機嫌をとって、画面が割れたのを直しに行くと言う弟と3人でドコモショップへ。弟も、プレゼントしたTシャツを着てくれた。似合っていた。

案の定待たされたが、なんとか機種変更を終えた。iPhone6Sの128GBモデルがまさかの全色完売だったため、SEの64GBモデル、カラーはスペースグレイに変更。弟は、6sPlusの64GBモデル、カラーはシルバー。

期末試験期間だという弟を家に置いて、私と父は、参院選期日前投票と祖父のお見舞いに向かった。

道中、ドコモショップで私たちを担当した女の子の話になった。あまりにもマニュアル化しすぎていて、プランの提案もなく機械的な対応をされ、不愉快であったのは父も同じだった。「あんなのだったらAIの方がいい」と感じた。あの仕事も、向こう10年でAIに取って代わられるのだろう。

市役所に着いて、いよいよ初めての投票。地元の事情も、今の政党のマニフェストもろくにわからないまま投票していいのかという不安。しかし、投票権を持ちつつ投票しない者に発言権はないと感じ、渋々といった心持ちであった。期日前でなくてはいけない理由を記入する欄で引っかかり、足止め。私は住民票を東京に移さずに1人暮らしをしていると説明したが、住民票を今後移す予定があるのか否かばかりしつこく聞かれ苛立った。結局、誘導尋問のように無理やり言いくるめられた形だった。お役所はこうも頭が固いのか、とまた不愉快になった。きょろきょろしながらなんとか投票を終えた。感想は特にない。

車に乗り込み、お役所への不満を垂れながら病院へ。2人の曽祖母と、よくしてくれた親戚を看取った病院だから、なんとなく嫌な感じがした。駐車場で、先ほどのドコモショップにいた客とすれ違い、偶然にびっくり。

祖父の病室には、点滴などの管に繋がれた祖父と、面倒を見ているというあの親戚の奥さん、父の兄とその子どもがいた。小さな頃よく遊んだいとこは、私のことを覚えてはいなかった。父の兄は漫画が大好きな市役所職員で、祖父に会いに来たはずなのに話し込んでしまった。

3人が食事に行くと言って出かけ、私と父と祖父で話した。祖父は、地元の私立大学の事務職員として定年まで勤務していた頃の話をしていた。学部を分ける分けないの騒動で教授と衝突した話、ビルだけの大学は大学ではないという話など。ドコモショップのロボット店員の話もした。その時祖父が「事務職はコンピュータのおかげで仕事が随分減った。いらない仕事を作って時間を潰している。しかし、時代が変わっても給料は相変わらず比較的よい。そんな人間にお金を払うのではなく、例えば看護や介護、保母さんなど人間でしかできない仕事をしている人にお金を払うべきだ」と言っていた。新聞をよく読み、社会について自分の考えを持っている祖父の言葉に胸をつかれた。このように考える人が増え、それが制度化されたなら、日本はより良い国になる。

祖父にまた会おうと告げて家に帰った。母が私の好物を作って待っていてくれた。寝ている弟は放っておいて、父と母と3人で夕飯。誰かと食事するのは楽しいし、誰かに作ってもらったご飯は2倍美味しい。母の味はそのまた2倍美味しい。幸福だった。暖かかった。

食後に家族とおしゃべりした後、部屋に戻って死んだように寝た。実家に帰るといつもこうだ。無限に寝られる。夢も見ない。

家族は暖かい。できることならずっとここにいたい。そう思うようになったのも、1人暮らしを始めた上に恋人ができたからだ。

母が離婚、3年前に再婚し2番目の父と暮らす彼。両親と名字も違う。学校ではクラス内カースト上位でそこそこ遊んで楽しく過ごしていたはずなのに、過去はつらいことが多いから戻りたくない、と漏らしていた。彼には悪いが、自分はとても恵まれているとしみじみ感じた。

愛してくれる父母、親族を愛し、大切にする気持ちだけは、何があってもなくしたくはない。

明日東京に帰る。また新幹線の中で少し泣いてしまうのだろう。